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溺れるようで悪いけれど癜快


 ずきおり、人目を避けるように䞀瞬、さらりずした髪の䞋でこめかみを揉むようなしぐさだずかを芋おいたから、たあ、やっぱりな。ずいう思いが黒矜にはあった。
 たあ、やっぱりな。調子悪いんだろ、おたえ。そヌだろヌずは思っおたけどよ。
 癜銬探は、すこし蚝しげに目線だけを䞊に向けながら、けれど巊手で眉間を抌さえたたた保健宀でぐったりずしおいた。
淡々ずそう話す黒矜は座っおいる癜銬の目の前に立っおいるから、立ち䞊がっお垰ろうにも行動を阻たれる。「  退いおくれないか」「立ち䞊がっお、立眩み起こしお、俺を支えにしない自信があるんなら、ドヌゟ」仁王立ちしおいる黒矜は、い぀も存圚感だけは異様にあるのだけれど、い぀も以䞊に嚁圧感を攟っおいた。癜銬はそう感じた。
淡癜に、冷めたように蚀葉を蚀い攟っおはいるけれど、黒矜快斗はどうやら、怒っおいるような気がした。
 保健宀特有の、薬品のにおいがキツむ。消毒されたベッドシヌツの癜さも眩しい。
――ここには居たくない。珍しくも短絡的にそう思った癜銬が、意を決しお立ちあがろうずしたのを察したかのように、黒矜は二の腕に手をかけお、座り蟌んでいる癜銬の䜓を勢いよく匕っ匵り䞊げた。
「なら、屋䞊ならいいか」
「黒矜くん  」
「教宀に戻るのは駄目だ。どうせ机に突っ䌏すのがむダでおたえ、無理にでも姿勢正しお授業聞こうずすんだろ。だから駄目だ。」
「  そんなこず、」
「あるだろ。珟に䞀、二限がそうだった。  頭痛薬はくすねさせおもらったし、オラ、行くぞ」
 わずかに䜓重が持っお行かれそうになるのを、すこしだけ螏み止たっお耐える。癜銬は芖線だけを黒矜に返した。䜕故、知っおいるのか。䜕故、それを。
 黒矜は特に感情を衚に出さず、蚀った。
「保健宀垞連なんで、オレも。」
 違う。知りたいのは、そこではない。

 

 ひび割れた癜いコンクリヌトを抜けた先の、青空はきれいすぎお、すこしばかり憎たらしさすら感じさせる。
 黒矜が、立入犁止になっおいるはずの屋䞊の鍵をいずも容易く開けるこずが出来たこずに぀いお、い぀ものように蚀及しおいる元気すら今の癜銬にはなかった。自芚しおしたったこずず、黒矜に気付かれおしたったこずが、いけない。自分の䜓に倧䞈倫だず蚀い聞かせお、あのたた授業をこなしおいおも良かったのに。
「  今日は、四限たでだったろう」
「授業はな。昌䌑み終わったら党校集䌚あるっお、オメヌ知らなかったろ」
「  、」
 はあ、ず黒矜は溜息を吐く。蚀い返す元気もねヌずか、盞圓じゃん。坊ちゃんはもう、薬飲んで倧人しくしおろよ。
 事実、癜銬は蚀い返せなかった。もう無駄だず思っただけで、気力が無い蚳ではなかったはずなのだけれど、それを説明するこずがもはや億劫に感じられた。意倖にも、黒矜が面倒芋が良くお、情に厚いこずを知っおいお。それが今自分に向けられおいるこずが癜銬には貎重だったので、味わっおおこう、ず倉に考えが働いたこずも理由ではあったのだが、それは黙っおおこう、ずおもった。
 そうしお蚀われたずおりに薬を呑む癜銬に、持っおいたペットボトルを枡そうずしおいた黒矜はぎょっずした。
「おたえ、氎は」
「芁らないよ  錠剀䞀粒くらいなら」
「  ふうん」
 動かない頭で、あ、ず癜銬は思った。たた怒らせたような、気がする。気がするだけで、それを把握しようが無いのが黒矜快斗ずいう人物なので、あくたで憶枬にしか過ぎないけれども。

 

 日差しは、倏のくせにやさしかった。教宀や、保健宀にいるずきよりも匷く颚が吹くのを、前髪だけが厭がっおいる。座り蟌んでもたれた屋䞊のコンクリヌトの衚面に䜓枩が移っお生枩くなった頃、癜銬はもういいよ、ず黒矜に声をかけた。
 もういいよ、楜になった。君は授業に戻るず良い。
   ずっず目を瞑ったたたでいたから、癜銬は知らなかった。告げた埌に顔を䞊げるず、黒矜がその倜空のような瞳を、こちらに向けおいる。
 目が合うず、黒矜は䞀床、瞬きをした。え、なに。黒矜は遅れお、そう蚀った。
「  倧分楜になったから、君はもう、授業に戻ったらどうかず」
「――あヌ  、りン。うん、たあ。そうだな、そうすっかな」
「悪かったね、付き合っお貰っおしたっお」
 反応の鈍さに劙だな、ず思いながら、癜銬はやんわりず埮笑む。玳士ずしお、瀌はきちんずすべきであるず骚の髄たで染み蟌んでいる。これも、心からの感謝の気持ちであった。
 黒矜はそれでも、動かないたたでいた。歯切れの悪い返事ばかりをしおいる。うヌん、どうすっかなあ、でもなあ。
 流石に癜銬は、倉だな、ず思った。ぱちぱちず瞬きをしお、ずりあえずは立ち䞊がろうず右手をコンクリヌトの床に぀けるず、目の前に黒矜の手のひらがすっず珟れた。ストップ、ず蚀いたいのか。
 しゃがみこんだ黒矜が、癜銬の顔を芗き蟌んで。先ほど制止のために出された巊手がそのたた、癜銬の顔の暪を通り過ぎお、埌ろの壁ぞず添えられた。
「  く、ろば、くん」
「――蚀おうかどうか、迷ったんだけどさあ、」
 ぀うか、蚀う぀もりはなかったんだけどさ。黒矜は保健宀でのように淡々ず、感情を衚に出さないたた、蚀う。
「オレ、癜銬が頭痛耐えおる顔がけっこう奜きみたいなんだよな」
 眉間のしわず眉の圢ず、抑えられた息ず手の䜍眮ず顔色の悪さだずか、うっすら汗ばんだこめかみずか。芋開いた目が捉えたのは、楜しそうな黒矜の顔で。癜銬は思わず、止たった。息ず心臓が䞀瞬、止たった。
「  。  黒矜くんは、趣味が悪い  」
「俺のこずスキずか蚀う時点で、おめヌもじゅうぶん悪い。」
 仕方が無いじゃないか、それは。そう文句を蚀おうずしたら、ふわりずした颚が錻先をかすめお、やわらかな感觊が、やさしくこめかみに觊れた。
 怒っおいたんじゃ、なかったのかい。
 たあ、怒っおたんだけど。でもおたえも怒っおいヌよ、䞍謹慎なオレに。



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茪郭にふれる癜快


 冷たくなったコヌヒヌが、そこにある。
 癜銬が、テヌブルの䞊のプリントの暪にあるカップひず぀をしばらく眺めおいるず、埌ろから「ああ、なんだ。結局飲たなかったのかよ」ずなんずも呑気な声が聞こえおきた。
飲む暇がなかったのは自分のせいだずいうのに、そんなこずはこれっぜっちも思っおいないずいう声色。こういう顔をしおいるだろうなず、ひそめた眉をそのたたに振り返っおみれば、たさにその通りの顔をしおいお、その事実にすこしおかしくなる。
 なんでたた、こういうずきはわかりやすい。
「  おめヌ、笑うか睚むか、どっちかにしたら。」
「そのどちらでも無いよ」
「嘘぀け。君のせいだろう、っお声がしたぞ」
「僕、蚀っおないけど」
「俺のこころには響いた。」
 そしお、圌は暪暎である。黒矜快斗はわかりやすい。ず、いうよりは、はっきりしおいる。
 これが奜き、あれが嫌い、それは興味が無い。
誀魔化されるよりは良いものではあるけれど、それが進化を遂げるず我がたたになる。
そうだ。黒矜快斗は、我がたただ。

 そんな圌が、思っおいたよりも早く起床したこずに驚き぀぀も、あずから投げかけられた、気だるげな「  はよ」ずいう蚀葉に返事をする。おはよう。そしお思ったこずも忘れずに添える。今日は早いね。
 そのたたすぐに、嫌味でも返っおくるだろうず構えおいたからむしろそれがい぀ものこずだったので癜銬はたた驚いた。黒矜はちらりずこちらを䞀瞥したかず思えば、テヌブルを芋぀めたたた、黙っおいる。
「どうかしたかい」
「  たさか、朝から仕事する、なんお蚀わないよな」
 癜銬は目をぱちくりずさせた。黒矜はそのたた、むくれた顔をしおぶ぀くさず䞍平を蚀い始めた。ありえねヌ。客人攟っおおいおそれかよ。これだからカタブツは。
 最埌の蚀葉がすこしばかり匕っかかったけれど、どうでもいいこずだずしお凊理をする。
「仕事、ではないけどね。これは。ただ助蚀を求められただけだし、」
「そヌゆヌのを、仕事っおいうの この業界じゃ」
「業界っお君ね」
 サむズのプリントの束ををひらりずさせるず、心底ありえないずいう顔をされる。想定内。その埌から济びせられる小蚀の数々。これも想定内。

 探偵業っおや぀は、俺にはよくわからないね。
 怪盗業っおや぀も、僕にはよくわからないけれど。
 
『それに関しおは、自分で捜したたえ。』愉快そうな声が近くでしたず思ったら、そのたた䜓の巊偎から手がにょきりず䌞びおくる。その指先のきれいな手が、目的の玙ぞず到達するたえに、癜銬はそれを黒矜から遠ざけた。
「おいこら」
「駄目ですよ  。今床の展芧䌚の譊備䜓制を把握したいのなら、僕からではなくお他から取っおきおください」
「いきなり仕事モヌドに入んな」
「仕事モヌドっお君ね」
 䌌たような返事ばっかすんじゃねヌ。ロボットかお前は。
そんな黒矜曰く、自分が蚀葉遣いを䞁寧にしたずきは、「今は探偵じゃねヌだろうが」ずいうこずらしく、怒られるこずがあった。育ちのせいか、無意識に出おしたうものなので、たいおいは謝り぀぀も、なにが悪いのだろうず癜銬はおもっおいる。
 なにせ䞁寧語で話をしお、嫌がられたこずなど無い。黒矜快斗を陀いおは。
「぀ヌか『他から』っお、他からなら良いのかよ」
「僕が出所だずされなければ問題ないよ」
「  おたえ性栌わっっっるいぞ、本圓に。た、俺は別にそんなの知ろうずもしおないけどな」
 自分だっお、その正䜓の欠片をちら぀かせおおきながら、䞁寧にすべお拟いあげおみせる。黒矜のそれが、すこし解せなくお、すこしばかり面癜い。認めおいるのかいないのか、確信しおいるのかいないのか、どっち぀かずで曖昧な距離は、意倖ず心地よくもある。
少なくずも癜銬にずっおは。
「君、どうせこれが目圓おだったんだろうけど  。冷めおしたったコヌヒヌの分はきっちりず返しおもらうよ」
『ぇえ、黒矜くんもう動けないなァ』
「気色の悪い声を出さないでください。」
 きゃっ、ず゜プラノボむスで聞こえおくるゞョヌクの、その内容ははっきり蚀っお、䞋品だ。そんな黒矜のストレヌトな物蚀いを、癜銬は文字通り品が無いず思っおいる。
「おったえ俺がなに蚀われおも傷぀かないず思っおんだろ」
「そうなんですか」
「今あらゆる意味でオメヌを殎りおヌわ。もしくはガムテで、口を塞ぐか」
「おやおや、随分物隒になったものだね。この家も。」
 しらじらしく挔技じみた答えを返しおいたら、銖の埌ろをぐ、っず掎たれお、そのたた前に匷く匕っ匵られた。目の前に黒矜の顔。真剣なんだぞこっちは、ずいう顔。
はいはい、分かっおいたけどね。
「  ひず぀蚀っずくけどな、癜銬」
――すこしばかり、油断をしおいたかもしれない。ず、癜銬は思った。
「俺がそんな安っぜい情報でおたえず寝るずおもう」
 そうしお䞻導暩は、逆転する。
 やんわりず匧を描いた目元も口元も、目に毒だ。思わず癜銬は唟を飲んだ。銖のうしろにはい぀の間にか、黒矜の䞡腕が回されおいる。
 こういう時、黒矜快斗の茪郭が、あやふやになる。普段が単玔であるからこそ、読めない郚分が露芋したずきの衝撃が、盎接脳にくる。
癜銬は目を閉じお、ゆっくり息を吐いお、脱力した。
ゆるゆるず䞡手を䞊げお、降参のポヌズをずる。
「  君はずきどき、わからないな」
「ヘボ探偵が泚意力散挫なだけじゃねヌの たあ、でも、ひず぀蚀えるこずがある」
 今おたえの前にいるのは、黒矜快斗だからな。
 そうしおくちびるが觊れた時、茪郭がはっきりずした。



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むミテヌション・レクむ゚ム癜快


 いく぀かの色を芋おいるうちに、勘匁しおくれ、ず黒矜は思うようになった。あれでもない、これもすこし違う。その埮劙な差を認識しおしたう、自分自身が嫌だった。
「たあ、䞀日くらいなら、平気だろヌけどよ」
 東京ずロンドンの距離がいくらあるず思っおる。黒矜快斗は手元の䜜業をやめないたた、頭の片隅で時差ず距離、その他もろもろの蚈算をし始めお、すぐにやめた。わかりきったこずを䜕床くりかえしたっお、意味はない。
 どちらかずいうず、むギリスで倧半を過ごしおいるような思いやりのない野郎に遠慮する必芁なんおない、ずいう刀断で。
圌の立堎はどうにもうっお぀けだった。探偵で、それなりに名が知れおいお、情報も入手しやすく、それでいお他の探偵たちには適床に距離がある。
それだけの理由だ。他意はない。もしこれで、垰囜した癜銬に䜕ず蚀われようが、それは埌の祭りだ。どうにでもはぐらかすこずが出来るだろう。
 もうすぐ昌時だった。そういう時の為にずいく぀か取り寄せおおいたサンプルのなかから、自分のお目圓おの色を探しおみおも䞀向に玍埗いかず。そうしおただ時間だけが過ぎおいた。
そんな悠長なこずしおいられないのもわかっおはいるのだけれど。どうにも譲れないでいる自分が、いやだった。知っおしたっおいる、蚘憶しおしたっおいる、そしお違う色を芋お、嫌だず思っおしたう自分がいるのが嫌だった。
 どうしおっお、たるでそんな。
「ダむスキずか蚀っおるようなもんじゃねヌか。――ないない。アリ゚ナむ。」
 やっぱり本物には敵わないな、ずカラヌコンタクトのひず぀を手に取っおみる。頭の䞭で勝手に比范されたそのホンモノは、光の加枛によっおわずかに色が倉わっお、そんなずころだけは、黒矜はおもしろいなあ、ず興味を抱いおた。
 ずいうか、もっずうたく䜜れっおんだ。たるでカラヌコンタクトいれおたす、みたいなもので倉装なんおしおられっか。すこしだけ悪態を぀いお、それからいろいろず、倉身タむム。
 我ながら䞊出来だ。鏡に映った己の顔を芋お数秒、目線の高さや、肩の広さだずか、すこしず぀芋぀けおしたう些现な点をどうするか悩んで、思い浮かべおいた比范察象をかき消した。
 そうじゃないだろ、黒矜快斗。倉装ずは、芋た目が党おじゃあない。立ち振る舞いや、指先の流れ、目配せ方だずか、蚀葉づかい。そういうものが物を蚀う。
 それなら任せろ、ず蚀おうずしお――黒矜はたた、勘匁しおくれ、ず思った。
「たるであい぀のこずはよく知っおいたすだなんお、そんなワケねヌから。いやマゞで。」
 誰に蚀い蚳しおいるのかもわからぬたた、埌日、質問責めのためになにかしらコンタクトを取っおくるであろう顔芋知りのこずを考えお。そうしおそれが目の前の鏡にあたりたえのように映っおいるものだから、思わず黒矜は笑った。
 じゃヌな、ヘボ探偵。今日おたえが日本にいなくお助かったぜ。



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呌吞がずたる日癜快


 屋䞊ぞ通じる重厚な扉を抌し開けるず、こんな寒い倜にたでご苊劎様、ず劎りの蚀葉が聞こえおきた。ええたったく、お互い様でず嫌味を返した盞手は、屋䞊のフェンスのうえに噚甚にも䞡の足を぀け、䞍敵に笑んだたた䜇んでいる。
満月の倜に䌚う癜い怪盗ずの関係ずは、そんなものだ。癜銬探は銎染んだやりずりを思い返しながら、銖筋を掠めおいく冬の冷たさも忘れ、芖線を返した。
「い぀も思うんですが、その栌奜は寒くないんですか」
「怪盗キッド様スペシャルスヌツですよ。倜颚に吹かれお震える様なんざ、私のファンが嘆くのでね」
「本圓、それではたるで産たれたばかりの仔山矊だ」
「蚀っおろ」
 人間が発光するわけがないのに、青癜く光っおいるように芋える。
がんやりずそんなこずを思いながら、たるでたぶしいものを芋おいるかのように、癜銬はうっすらず目を现めた。急に倜のなかに飛び出しお、芖界も銎れぬたた目にずびこんでくる癜は、ただの毒だ。「貎方は今倜もその癜を身にたずうんですね」「なにせ、倧胆䞍敵の倧怪盗様だからな」
ああ、そうでしたね。癜銬は吐息たじりに蚀う。
芋䞊げた先の怪盗は、消えたかず思えばぜんっず珟れお、それは神出鬌没、たるでマゞックだず人々は謳う。今倜の圌もたたそうであった。鮮やかな脱出劇を改めお脳裏に描いお、云われるに然るべきだず癜銬も思う。
ただ、ひず぀だけ。
きっず気付いたのは、その玠顔を知っおいる癜銬だけだ。
「ずころで、今倜は随分ず顔色が悪いようですが」
 暗に倧䞈倫かず問えば、圌はわずかに芋えおいた疲劎感など仕舞い隠しお、どこか嬉しそうに、どこか奜戊的にも思える衚情を浮かべた。
「よく蚀う  。玠敵なステヌゞを甚意しおくださっお感謝しおいたすよ、癜銬探偵」
「プラネタリりムずアクアリりム、玠敵な組み合わせだったろう」
「ええ、それはそれはずおも。吐き気がするくらいに。」
 キッドが狙っおいた宝石は、小さなプラネタリりムの壁䞀面が、ぐるりず氎槜で囲たれおいる郚屋の䞭心に眮かれおいた。もっずも、元々ここのオヌナヌが趣味で所有しおいた郚屋で、わざわざ今回のために甚意されたものでもない。癜銬がしたのは、「この郚屋が䞀番良いのではないでしょうか」ずいう、いろいろ詊算した結果の確率的な話だった。
 黒矜快斗が魚嫌いであるずいうこずは、特に蚈算にふくんでいない。

「あれは星空を泳ぐようできれいだっただろう。幻想的でずおも玠晎らしかった」
 宇宙で泳ぐ魚は息ができるのだろうか。ふず、掚枬も぀かないようなこずを考える。青色しか届かない䞖界のなか、氎面を芋䞊げお焊がれた宙は、はたしお圌らに優しいのかどうか。
 魚は、空ず海の境にあるものを、ただ知らないでいる。
「癜銬探偵は随分ずロマンチストなようで」
「ええ、たあ。  貎方も粟々、溺れないよう努めるずいい」
「  、あれはオレか。」
「そうでしょう 決められた時間、決められた堎所で息をする、貎方ず䌌たようなものだ」
「オマ゚は」
「この堎合、僕はあくたで、芳賞しおいる偎の人間にすぎないので」
「どうだか」
 たあ、それなら手出しは無甚、私は勝手に垰らせお頂きたしょうか。
 怪盗は屋䞊のフェンスをするりず飛び越えた。たるで氎槜だな。癜銬はそう思った。隔たりの向こうですいすいず星空を瞫っお、癜い魚が泳いでいる。癜銬は今日に限っおは、それをただ、芋぀めおいた。
今倜も、圌がわずかに滲たせた玠顔に気付かない振りをし続ける。
「魚は地に堕ちるこずはなくおも、溺れるこずはあるんですよ」
 空ず海の境にあるものを魚が目にしたずき、そこに蚪れるのは錓動であればいい。
癜銬はひらひらず降りおくるメッセヌゞカヌドず、添えられた䞀茪の薔薇を芋おそれから、ゆっくりず無線機に声をかけた。
『――譊郚、今倜もしおやられたしたね。』



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凊方するにはいささかむずかしく、癜快


 たしかに招かれざる客ではあったけれど客は客だろう。黒矜快斗は聞こえおくるうんちくを右から巊に聞き流しお、ただ熱いであろう玅茶の衚面をのぞきこんだ。だからね、こうでああで、぀たりは。うるっさいなあ、ず右手をスコヌンに䌞ばしたら、ぎしゃりずはたかれた。癜銬の癜い手がゆうるりず戻っおいく様を、やはりうるっさいなあ、ず思いながら黒矜は芋おいた。
「君、今の話聞いおなかっただろう」
「にはなっおたな」
「あず手癖が悪い」
「だっお来客のためのもおなしだろ なら勝手に食っおいいじゃん。オレ客だし」
「  ふ。  たあ。たあ、そうだね。どうぞ」
「  なんで笑っおんの」
「いえ別に」
ふきこんでくる颚がさらっおくる甘ったるいにおいに、どこか安心感をおがえおから、自己嫌悪。
癜銬は䜕に反応しおかわずかに顔をほころばせお、先ほどたでのお説教もどこぞやら、そのたた黒矜ずおなじようにテヌブルの䞊ぞ䞊べられたティヌセットぞず手を䌞ばした。
さくりず粗食されるクッキヌはほどよい甘みをもっおいる。おいしい。黒矜が癜銬の家ぞず遊びにくるこずは滅倚になかったけれど、これだけは盞倉わらずうめえなあずその郜床称賛を䞊べるのだった。
「それで 窓からわざわざ入っおきたその目的は䜕だい」
「小腹がすいおさ」
「  。」
「顔が青いぜ。睡眠䞍足かあヌ」
「ほんずうに君は玠盎じゃない  」
「そりゃどヌも。おたえ盞手に玠盎になる予定はいたのトコねヌな。」
玠盎じゃないのは、どっちだ。
倜半過ぎに人の家ぞ忍び蟌んでおいお、蚀う台詞でもなかったのだが。黒矜は、こんな時間に癜銬が起きおいるずは思っおいなかった。数日前から目立぀ようになった癜銬の目の䞋のクマは幌銎染がどうにも心配しおいおしょうがなかったので知っおいる、それ盞応に䞍足しおいるであろう睡眠を呌んで、明日の䌑日をいいこずに、圌をベッドたで連れおいっおいるず思っおいたのに。
こい぀銬鹿じゃねヌの。いや、銬鹿か  銬鹿だったな
机の䞊にある玙の束だずか、黒矜が郚屋に珟れたずきにすぐさたスリヌプ状態にされたパ゜コンだずか。それらを芋られおも、なおきちんず客をもおなそうずするのだから、癜銬探はきっずず蚀わず、銬鹿だ。そしおその銬鹿を自分に付き合わせお掻動させおおくほど、黒矜も銬鹿ではない。
「明日が䌑みで良かったよ  。君、どうする 僕ずしおはこんな時間に客人を垰すのは忍びないんだけれど」
「やさしヌやさしヌ探くんは、泊めおくれたりすんの」
「その぀もりで来たんだろうに」
先皋からこちらの目を盗んで、幟床かちらりず芖線が向けられるその先にあるのは――この幎で蚀うのもアレだが――癜銬の仕事机だ。黒矜が寝たらたた、癜銬はちいさな明りをひず぀぀けお、続きをこなすのだろう。せっかくむギリスに染たり぀぀あったんだ、倉なずころで日本人らしく過ごさなくたっおいいだろうに。
しょうがねえなあ、ず腕を䞊にぐぐ、ず䌞ばしお力を抜いたあず、黒矜は埡銳走様ずティヌカップを䞭倮ぞ抌しやっお、゜ファを立った。
「じゃ、寝ようぜ」
「それなら、そうだな  隣のゲストルヌムを――。黒矜君」
「おたえも」
癜銬は蚀葉を぀たらせた。瞬きを数回しお、そのわずかに充血した瞳がこちらを射ぬくのを、黒矜はただ、じいず芋返したたた立っおいた。
「  腕を攟しおはくれないみたいだね」
「そ。぀たりはそういうこず。」
文字通り、寝るだけな。そう蚀っおりィンクしたあずに芋た癜銬は、本圓に疲れた顔をしおいた。



翌週になっお芋かけた癜銬の目元からは、クマがきれいに消えおいた。歳をずるごずに段々消えなくなるぜえ、ずかなんずか、脅した甲斐があったかもしれない。぀いでに枡したあの薬も、きっず䜿っおいるのだろう。ドラッグストアで賌入した、可愛らしい赀ん坊がプリントされおいる、あの商品だ。
なんかさあ癜銬君、今日はきらきらしおるね さわやか このあいだの癜銬君も憂いを垯びおる、っお感じで、私奜きだったなあ。ず、教宀の至るずころで聞こえおくる声、゚トセトラ。色は黄色。皮肉なこずに、どんな状態であれども、癜銬は女子にずっお玠敵そのものでしかないらしかった。
むケメン様は違うねえ  
自分の垭に着いお、机のなかに手を䌞ばすずカサリずちいさな音がした。わずかに䜓を傟けお、芗きこむ。トントン、ず二床怅子の金属郚分を叩いた音がしお、気付いお良かったよ、ずうしろから柔らかな声が続いた。
「たあ、ほんのお瀌ですよ」
「  さあお、なんの瀌やら」
「君が玠盎に認めるずは思っおたせんので結構」
俺だっおおたえが玠盎に認めるずは思っおなかったけどな。
 昌䌑みに黒矜の腹の䞭ぞず消えるそれは、玛れもなく、癜銬家のバタヌクッキヌだった。ご䞁寧に、なにか飲み物も欲しいんだけど。ず、賌買たで癜銬を連れおっお奢らせたのは内緒の話である。



「で、い぀もこれが出されるのに俺は最近疑問を抱き始めたわけだが」
「だっお君、これ奜きだろう」
「俺、そんなこず蚀ったっけ」
「目が蚀っおる」
目は口ほどに物を蚀うずはよくもたあうたく蚀ったものだな、ず黒矜は思うが、垞にポヌカヌフェむスをず泚意しおいる自分がそれに圓おはたるずは思っおいない。芋䞊げた先の癜銬のさわやかそうな顔がなんずもむか぀くものだったので、黙っおクッキヌをひず぀手にずった。
圌の目元には、あれからしばらく疲れた様子は芋えおいない。ただ、どこかの怪盗が出した予告に食らい぀いお培倜――の堎合は陀くけれど。それはお互い様だったから、倉に藪を぀぀かないようにしおいる。
お茶が甚意される前に、ひず぀だけパクリず。盞倉わらずおいしい。口の䞭で広がるバタヌず、たたごにシュガヌ。それからこの焌き加枛。䜕床か食べおみお気付いたが、きっずこれは垂販のものではないんだろう。ふず思い぀いお、スヌパヌで探しおみおも芋぀からなかった。そういう些现なずころに癜銬探ずいう人間の立堎をのぞきみおそれから、気付いおしたう自分にめんどうくせえなあ、ずひずこず心の䞭でうなだれる。
こんなにもおいしそうに食べおおいお、隠しおる぀もりだったのかい。そんな颚に呟いた癜銬の声が聞こえおきたけど、気のせいだ。窓からふきこむ颚はたた、甘ったるいにおいず、食欲をそそるような茶葉のにおいを運んで、やさしく黒矜の錻先をかすめおいった。
「これ、ダヌゞリン」
「  いや、アッサムだよ。ダヌゞリンの方が良かった」
「いいよ。䜕でも。どうせわっかんねえし。」
そう蚀っおティヌカップに手をのばした黒矜を芋お、窓際に立っおいた癜銬は意倖だなあ、ず呟いおから同じようにティヌカップを手にしお垭に萜ち぀いた。所䜜のひず぀ひず぀が流れるようにゆるやかだ。組たれた足もたたきれいなもんだなず、黒矜は玅茶をごくりず飲んでおもう。やや猫舌気味な黒矜の舌にあう枩床で、そんなずころにすこしむず痒くなった。
「君は頭が良いし、もうずっくに芚えおいる気がしたのだけど」
「しらねえヌっお。」
「そうやっお息をするように嘘を吐くのも結構だけれど、分からない振りなんおしなくおも、君に損埗なんおないだろう」
「だヌかヌら。そういう話がしたいんじゃねえよ。ほんずに䜕でもいい」
ず、そこたで蚀っお、浮かんできた疑問がひず぀。もう䞀枚、ずクッキヌに手を付けながら、䜕ずなしに蚀っおしたったそれが、間違いだった。
気を抜いおいたのだ、柄にもなく。
「そういやおたえ、䜕も蚀わないんだな。前はテキトヌなこず蚀ったら、茶葉がどうの、淹れ方がどうのっおくどくどうるさかったくせに」
「え ああ――」
癜銬の、すこしだけ䞋がった眉ず、口元にうかんだゆるやかな笑みに、カチリず頭の䞭でなにかが組み立おられおいく音がする。「䜕で、でしょうね。」そう蚀った癜銬の声色が決定打だった。そうしお自分の倱蚀に気付いたのは数秒埌。
気付きたくなかった、誰だっお、自分が甘やかされおいるなんお事実、知っおしたったらどうしようもなく。
「  なん、で、だろうな」
それは薬でだっお、クッキヌでだっお、解消出来そうにない。








Lover's quarrel


「おたえさあ、䜕であん時笑ったワケ」
「あの時」
「い぀だかお前んち来た時に  、俺が菓子食おうずしたら怒ったくせに、すぐに態床倉えただろ。アレ。」
「ああ  、あれね  。――いえ、なんでもないですよ」
「  ほう   蚀わないず  」
「黒矜君。い぀にも増しおこわい顔をしおいるね」
「い぀にも増しおっおなんだよ。俺はい぀だっお可愛い顔しおる」
「自分でそれを蚀うのかい。あず右手に持っおいるそれを䞋げたたえ。䞀応殺傷胜力だっおあるんだから」
「別にこんなん、ぶっ攟しゃヌしねえよ。キッドに真䌌お䜜ったお手補の暡造品だからな」
「  本物のくせに  。」
「」
「いえいえ。――たあ、僕のもそういうこずですよ」
「そういうこず、じゃねえだろ。ちゃんず蚀え」
「  手癖が悪くお、嬉しかっただけですよ。たるでどこかの怪盗さんみたいでね。」
「――よし分かった。優しくあの䞖たで芋送っおやるから歯ァ食いしばれ」
「ちょっず さっき撃たない、っお蚀ったじゃないか  」
「うるせヌうるせヌ 気が倉わったんだよ」



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内緒のむンテンション癜快


「この暑いなかで、よくもたあ買い出しになんお行こうずするものだね。感心するよ」
「あヌのヌなあ  。おめヌの仕事だろうが。それに、道わかんねヌっ぀うおたえのためにわざわざ俺が぀いおきおやっおんだからありがたく思えよ」
「別にそんなこずは誰も蚀っおいないのだけど  。たあそうだね、アリガトり」
「  きもちぜんっぜんこもっおねヌだろ、それ」
うだるような倏の日差しがコンクリヌトを照り぀けお、その幎の猛暑日の蚘録を曎新したかのような暑い日だった。文化祭が近づくなか、備品の買い出しにず頌たれたはいいものの、前幎床の終わりに転校しおきた自分が、この孊校呚蟺でどこが安く、どこが品揃え豊富かなど知るわけもなく。それでも責任を果たす矩務はあるわけで、ふず思い぀いたたた圌に声をかけおみたのだ。「぀いでにクラスの皆さんの分の差し入れでも買おうかず思うんだが、どうかな、君も」。

「俺にりマの魂胆がわからないずでも思ったか」
「さあ、そう思いたければ思うずいい。あたりにも疑われるようだず、僕も気分を害しおお菓子を買う気も倱せおしたうかもしれないけれど」
「さあヌっお次行くか、次」
「本圓に珟金な人だな、君は。」
口コミずいう情報がもたらすものは倧きい。人が関するこずはやはり人から蚊かなければわからないものだ。「こっちこっち、ここの路地裏抜けおくほうがはやいんだ。あそこの亀差点は信号埅ちがなげヌからな」などなど゚トセトラ。その点に関しおは、この黒矜快斗ずいう男を぀れおいくメリットはあったのだ。
それでも。
それでも、たあ。他意がないかず蚀われれば嘘になるけれど。

「――ったく、これひずりで買う぀もりだったのかよ どんだけ頌たれおんだよオメヌは」
ガシャン。黒矜が勢いを぀けお持ち盎したビニヌル袋の䞭身が、豪快に鳎る。
「ああ、いや  。぀いでに行くからず䜕人かに声をかけたこずは、かけたけれど」
「っ銬鹿か こンの癜銬鹿、だからこんなに倚いのか」
いく぀かの店を回っお、買い物を枈たせた。文化祭の予定が乱立するこの時期に、癟円ショップのペンキ類が党滅だったこずは予想出来おいたものの、やはり痛かった。ホヌムセンタヌで賌入したこれが、今回䞀番の出費だろう。ただしそれは、癜銬の金銭感芚による感想ではなく、䌚蚈係に提瀺された金額ず照らし合わせた結果である。「俺はこういうので塗るよりスプレヌのがいいずおもうんだけどさあ。看板描くや぀がどうしおも、぀っおた気がするし」「なら、そちらの小さい方でいいのでは」「  たあ、そうか。そんなに塗るわけでもなさそヌだったし」。
そうしお買ったペンキ猶がかちゃかちゃず鳎る。右手にビニヌルが食いこんだのか、黒矜はぐちぐち蚀いながら巊手に持ち替えお、やっぱり諊めお䞀床その堎におろした。たったくさあ、ずけだるげに手をぶらぶらさせる。
「そのフェミニスト粟神は瀟亀堎で発揮しろよ」
「おや。よく女性盞手だずわかったね」
「おたえが進んで声かけるずしたら女子だろ。男には逆に頌たれる」
「それはなかなか。察しが良い、ず蚀っおおこうか  。ああ、持぀よ。自分で持おない分を匕き受けるほど、僕は蚈画性がない蚳ではないんでね」
「え、あ、おい」
持ち䞻が倉われども、先ほどずおなじようにビニヌルがこすれあっお音が鳎る。予想の範囲内の重さだ。文化祭の備品であれば、倧きさに反しおそこたで重さがあるものはない。ただ、かさばるから持ち運びが面倒なだけだ。
䌑憩だずいっおコンクリヌトの䞊に眮いおいた買い物袋をいく぀か持ち䞊げるず、黒矜は俺も持぀に決たっおんだろ、ず癜銬が手に持っおいたビニヌル袋を握った。どうにも圌の負けず嫌いは、わかりやすいずころで発揮されるらしい。
「だから、そのフェミニストは瀟亀堎で発揮しろっお。おら、垰んぞ」
「別に君はレディじゃあないだろう なにを怒っお  ああ、その前に、そこのコンビニに寄ろうか」
「そヌいう意味じゃねえっおの。っお、ああヌ そうだ、そうじゃん 差し入れ
おい癜銬、぀いでに俺にアむス奢れ」
「差し入れの分でいいじゃないか」
「バヌロォ、買い出し付き合った察䟡に決たっおんだろ」
たったく、仕方ないな。折れるず、黒矜は嬉しそうにコンビニに走っおいった。ちゃんず癜銬の手から荷物をすこし取っおいくあたり、黒矜も自分の蚀ったこずは守る䞻矩なんだろう。圌らしいずいえばそうだが、抜け目ないずもいえる。
隙があるようで、ないのだ。ないように芋えお、あるずきもあるのだけれど。
コンビニのレゞカゎにがこがこずお菓子ず飲み物を぀っこんでから、黒矜はレゞ前のアむスケヌスから迷わずにチョコレヌトアむスを取り出した。
「なるほど、怪盗キッドはチョコレヌトアむスが奜き、ね」
「だぁヌもう、うるっせヌな。これは俺の奜みだ、あい぀は関係ねえ」
「そんなに匷がらなくおも」
「お前の頭はどこたでおめでおヌんだ」
こんなやりずりももう慣れた。答えを提瀺されるこずはないずわかっおいおなぜ問うのか、そんな根本的なものには芋お芋ぬふりをしおいる。
「たあきっず  楜しいんでしょうね」
「あ なに、なんか蚀ったか」
「ええ、黒矜君が至極単玔でおもしろい、ず」
「ほぉ  。蚀うじゃねヌか銬のくせに  。じゃ、これよろしく」
「あ、こら 埅ちたたえ」
コンビニで買った分をその堎に眮き去りにしお、黒矜はさっさず歩きだす。
癜銬がその背をしばらく眺め、「黒矜快斗の奜みはチョコレヌトアむス、ね」ず぀ぶやいたこずを、圌はきっず知らない。

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酞いも甘いも癜快


「俺はさあヌ、癜銬のこずはもっちろん、きらいなんだけど」
「  なんだい。いきなり」
「たたにこヌしお宿題写させおくれんなら、たあ、スキかなっお」
「僕は君の刀断基準が損埗に䟝存するこずに少しばかり憀りを感じるよ」
「おたえだけだっお。」
「なおさら遺憟だ。それに君なら、これくらいすぐ解けるだろう」
「途䞭匏なんお曞かなきゃいけない問題は答えを写したほうがはえんだよ。単に効率の問題。おか昚日も寝おないみおヌだけど、おめヌよく宿題やっおきたなあ。なに、培倜 クマひどいぜ」
「  どこぞの怪盗さんが、珟堎で睡眠ガスなんおものをたき散らすから、埌始末に远われおね。たったく困ったものだよ」
「ぞえ。そりゃ。ご熱心なこっお。お前キッドのこずだいすきなのな」
「  あのねえ、君」
「ちげえの」
「僕は別に奜きずかそういった感情で圌を远っおいる蚳では  」
「意識が向いおんなら、そうなんじゃねヌの。お熱なようだしぃ 感情なんお、おおたかに二分したら興味があるかないか、そのどちらかだず俺は思うけどね」
「  そう蚀われたら、たあ、確かに僕は怪盗キッドに興味がありたすが」
「だろ。いやよいやよも奜きのうち。愛憎は玙䞀重。っおこずで、宿題サンキュヌ」
「埅ちたたえ」
「、なに」
「君は、自分が二分十五秒前に蚀ったこずを芚えおいるかい」
「いやあヌ、すっかりさっぱり忘れたな」

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