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Reus



RKRN

けものの飢逓もんけた


※事埌
 
 
 
 その鋭い牙が喉元を食い砎る瞬間を、ずきおり倢に芋る。


「お前、さあ。本圓に奜きだな、ここ」

 銖元がよく芋えるよう手鏡を䜕床も傟け、鬱血痕の残っおいる堎所を指先でなぞる。今倜は同宀が䞍圚だからず誘った郚屋のなか、空が癜み始めたのを合図に脱ぎ散らかしおいた衣類を拟っおいる文次郎の背に向けお蚀えば、なにやら怪蚝そうな顔が返された。

「䜕だっお」
「ここ。喉んずこ」

 その背にうっすらず浮かび䞊がるいく぀かの赀い筋は昚晩、留䞉郎が付けたものだ。だから自分の喉元にあるこれも勢いの産物であっお、日垞ぞの圱響に文句があるのもお互い様、冷静になった今あらためおずやかく蚀う぀もりはない。ただ、ちょうど喉仏の䞊、頭巟を被った際にギリギリ隠れるであろうあたりにうたいこず付けられたそれを、ここ最近共寝したあず芋ない日はなかった気がする、ずがんやり思う。
 どうやら文次郎は痕を残すのが奜きらしい。そしおそれはい぀も同じ堎所だった。
 閚の最䞭、気が昂ったずきによく、文次郎が鎖骚あたりに顔を埋めおいるのを知っおいる。
 ぐら぀く芖界ず熱に浮かされながら、―――あ。いた、その鋭い歯が觊れた、ず。思う瞬間がある。それでも、たしかにその感芚があったはずなのに、芚めお芋ればそこには鬱血痕がひず぀あるのみで。その痕もきれいに消えたかず思えば、ふたたび文次郎によっお色が濃く戻される。そのくりかえしだった。

「䜕だよ。隠せないからやめろっお」
「そこたで蚀っおないだろ。぀ヌか、ちゃんず隠れるずころなのが腹立぀くらいだ」
「ならいいじゃねえか」
「頭巟をしおるずきならな 四六時䞭付けおるわけねえだろうが、俺にも日垞生掻っおものがあんだよ」
「だったらそこにある包垯でも巻いおおけばいいだろう」
「お前なあ  」

 孊園䞀忍者しおいるず称される男らしからぬ物蚀いに二の句が継げないでいるず、文次郎がなにかを投げお寄越した。県前で受け止めたちいさなそれは貝殻を加工した容噚で、開けるず独特の぀んずした匂いが広がる。留䞉郎もずいぶんず芋慣れたそれは塗り薬の䞀皮だ。文次郎が近くに座り盎し、背を差し出しおきたのを芋るに、おそらく塗るのを手䌝えずいうこずなのだろう。留䞉郎が付けたひっかき傷だ。こちらが手圓おをするこずに文句はない。―――ないのだが。

「お前は残せお、俺は反察に手圓おさせられるっおのはよ。なん぀うか割に合わなくねえ」

 蚘憶以䞊に残されおいるひっかき傷に薬を塗り広げながら、脳裏によみがえるのは昚晩の己の痎態だ。
 そこたで気を遣った芚えはないのだが。しがみ぀いお爪を立おおしたったず数えおいた分よりも、なんだか倚く傷跡が残っおいる気がする。それでも、コむツはこのあずすっきりした顔をしお朝を迎え、そのうち傷も治っお、䜕ら倉わらず日垞ぞず垰っおいくのだろう。片や自分は残された銖元の痕を芋る床にふたりの倜に戻されお、腹の底のほうで燻ぶり始めた情欲に蓋をしお、次の機䌚など期埅しおいないずいう顔で過ごすのだ。なん぀ヌか腹が立぀。自分ばかりずいうのは、なんだか負けたようで受け入れがたい。
 そんな恚みの念がこもった手぀きから䜕かを察したのか、目の前にある肩がため息に合わせお深く䞊䞋する。

「よくわからんが。こっちは血が出おいるずころもあるんだ、攟眮しお化膿でもしたら困るだろうが」
「いや、そう蚀われるずそうなんだが  」
「それずも䜕か 負けたみたいで悔しいずでも思っおるのか」
「だ、れ、が、䜕だっお」
「俺に負けたずきの顔をしおるぞ、お前」
「ぁあ゛ お前に負けたこずなんかねえだろうが」
「俺はよく芋るけどなぁ そういう顔」

 だからい぀だよ ずいう留䞉郎の反論は、発せられる前に喉の奥ぞず消えた。振り向いた文次郎に䞊䜓をやんわりず抌され、敷きっぱなしだった垃団の䞊に逆戻りする。自由に跳ねた留䞉郎の癖毛が、くしゃくしゃに皺の寄った垃地に広がる。

「たたどうしお倉なこずを蚀い出したんだ」
「倉なこずっお蚀うな」
「十分倉なこずだろう。  痕を付けるのは蚱しお、俺が治るのは蚱せねえなんおな。残したいのならお前も残せばいい」

 䜓重を掛けお留䞉郎の肩を抌さえ蟌む䞀方で、文次郎の右手はくすぐったくなるほどやさしく喉に觊れた。い぀も自身が残す、鬱血痕の堎所。たるでなにかを塗りこむように䞹念に、芪指が肌を撫ぜる。

「痕を付けたいずかそういう話じゃねえよ。ただ―――」

 文句があるわけではない。口吞いをするずき、いただに歯がかち合うこずのある自分たちだ。盞手ぞ食らい぀きたいずいう勢いがあるからか、やさしく觊れ合うこずのほうが少ない。文次郎の勢いず留䞉郎の勢い、そのどちらかが劣るこずなどない。でもそれが自分たちで、倉わらない事実で、盞手の情欲の激しさを䌝えおくれるず思うず自然ず心が喜んでいた。
 だから留䞉郎は、基本的に文句はなかった。痕を残すこずも、痛みを䌎うこずも。堎所に぀いおは議論の䜙地ありず思っおいるが。

「ほんずうは噛みたいくせに、どうしお噛たないのかず思っただけだ」

―――俺の、銖を。

 そう続けるず、奜き勝手遊んでいた文次郎の指の動きがぎたりず止たった。
 噛みたい衝動を抑えおいる理由があるずすれば、それは文次郎の優しさに他ならない。ならばその想いを無䞋にする必芁もない。それでも留䞉郎は止められなかった。だっおもう、ずっず喉が枇いおいる。この男に煜られお燻ぶり続けた劣情が、ずいぶんず前から頭をもたげおしたっおいる。

「いや、だから。お前が噛みたいのなら俺は別に」
「蚀っおいいのか」

 留䞉郎の蚀葉を遮るように、文次郎が呟く。その声は垞よりも䜎く、どこか獣の唞り声のようにも聞こえた。おもむろに顔を䞊げれば、逆光の陰りのなか滟る欲を宿らせた瞳がふた぀、留䞉郎を芋䞋ろしおいる。

「本圓は食っおやりおぇよ」

 思わず唟を飲み蟌んだせいで、喉仏がぐり、ず文次郎の指先を抌し返した。

「噛み぀いお、肉を食んで、したたり萜ちる血の䞀滎たで飲み干しおやりたい」
「  それは、」

―――喩えだよな
 そう蚀うよりも前に、文次郎の芪指が留䞉郎の喉を深く抌し蟌んだ。えずきそうになるのを堪え、わずかな隙間から酞玠をずりこもうず開いた留䞉郎の口を文次郎が噛み぀くように塞ぐ。―――喰われおいる。瞬時にそう思った。

「ん、ぐ んぅ゛  ッ」

 舌に歯を立おられ、匕っ蟌めればどこたでも远いかけられ、絡めずられる。呌気すら奪うような、い぀もず違う舐り方に目眩がした。くるしい。こんなにも息苊しいのに送り蟌たれる唟液なんおもはや毒だ。本圓に毒だったならば、飲み干すしかないそれで自分は死んでしたうだろう。これはそういう行為だ。留䞉郎は今、奜敵手盞手に急所を晒しおいる。

「かはッ、  っ、は、あ」
「はっ  、わかったかよ」

 奜き勝手に咥内を堪胜しおいった舌先が、糞を匕きながら離れおいく。心臓が早鐘を打ったようにうるさい。取り蟌たれた酞玠が、䜓の隅々たで行き枡っお熱を広げる。
 頭の血が沞隰しそうになるなかで、食べおもいいのに、ず留䞉郎は思った。自分だっお、己を食べ尜くしたいずいう情欲に負けぬほどの欲望を、この男に抱いおいる。䞀方では意味がないのだ。自分は、双方の苛烈さがぶ぀かる瞬間を味わいたい。手加枛されお肌を吞われるくらいならば、歯を立おおその皮膚を食い砎っおほしい。

「わ、かんねえよ。食いたきゃ、食えばいいじゃねえか」
「っ、」
「䜕を遠慮しおいるんだ。文次郎のくせに」

 それでも。ひず぀、こい぀が芋誀っおいるこずがあるずすれば。

「そもそも簡単に食い殺せるず思うなよ、俺を」

 文次郎が息を呑む。誘われるように、朝の淡い陜光から隠すように、ふたたび留䞉郎の身䜓に芆いかぶさる。
 そうだ、それでいい。手加枛なんおしなくおいい。消えおしたうのならば深く刻み぀ければいい。倜しか残らないのならば朝も残せばいい。単玔な話だ。諊めるのなんお性に合わない。ふたりで同じくらいがいい。
 額ず額がこ぀りず觊れ合う。さらりず萜ちおきた文次郎の髪がたるで垳のようだず思った。倖から遮断されたちいさな箱庭のなかで、これからふたりの朝が、始たる。

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誘発されお戊堎もんけた


―――ドボン、ザブン
 氎面を぀よく叩いた音が背埌に続くのを聞いお、留䞉郎は自分のほかにもうひずりが池ぞ飛び蟌んだこずを知った。今は瞌をき぀く閉じおおり目芖するこずは叶わないが、きっずおなじように錻氎たみれになった頭をどうにかしようず䞀盎線に池ぞず走ったのだろう。飛沫が奏でるバシャバシャずいう喧しい音の合間に、文次郎のダケク゜な雄叫びが聞こえおくる。
 顔呚りはすっかりべずべずだ。アクシデントでふたり揃っお錻氎を頭から被った。それはもう倧量に。錻氎はある皮の现菌兵噚だから、目に入る前に掗い流さなければならない。衣服が濡れるだずか、颚邪を匕くかもしれないだずか、そんなこずを考えるよりも先に䜓が動いおいた。冷えきった深倜の池のなかでふたり、じゃぶじゃぶず氎を济び続けおいる。
 留䞉郎は文次郎より早く終わらせようず可胜な限り手を速く動かした。頭巟を取り、結っおいた髪を解き、䞊半身にべっずりず付いたぬめりけのあるそれをどんどん掗い流しおいく。貎重な氎源を汚したこずを保健委員䌚に怒られるかもしれないが、今はずにかく芖界を確保する方が先だった。そしおコむツに勝぀方が先だった。

「けたせんぱい、ごめんなさい」

 ある皋床を掗い流し、芖界の確保に成功した頃合いになっおからようやく、自分を心配する声がするこずに気づいた。この状況を぀くった元凶―――頭にすっぜりず嵌ったアヒルさん䞀号の船銖食りを無事に取るこずに成功したしんべヱたちが、池の䞭のふたりを䞍安そうに芋おいる。

「いいさ、気にするなしんべヱ それよりも、アヒルが無事に取れおよかったな。念のため保健宀で銖呚りの状態を蚺おもらっおくるずいい」
「ええ、でも平気ですよ は  っ、は、はくしゅっ   くしゃみが、止たらないくらいで」
「いいから行っお来るんだ。他のみんなもしんべヱに付き添っおやっおくれ。喜䞉倪、胡怒を取っおきおくれおありがずうな。䜜兵衛は吉野先生ぞの報告を頌む。船銖食りは無事だが、どうやらボヌトは池の底に沈んでしたったらしいず」
「「っはい」」

 党身ずぶ濡れになった身䜓に、倜の颚は䞀局厳しく感じる。
 あの状況で井戞に走らず、池ぞ飛び蟌む遞択をしたのは留䞉郎自身だ。その埌始末たで埌茩たちを付き合わせる぀もりはなかった。なにせこれから濡れた衣類を掗濯し、髪を也かし、改めお池の状況を調べ報告をせねばならない。床に就けるのは䞀䜓い぀になるこずやらである。忍びは眠れるずきに眠るべきなのだから、党員での沈んだボヌト探しは明るくなっおからでいい。
 委員䌚の埌茩たちが戻っおいくのを芋届け、留䞉郎はふたたび池のなかぞ頭を突っ蟌んだ。前髪がどうにも気になっおしょうがなかった。觊っおみたずころ問題はなさそうではあるが、劂䜕せん手が悎んでおりその感芚自䜓がそもそも信甚ならない。うヌん、ずすこし思案を巡らせおから、たあこれしかないよなあず、盞倉わらずざばざばず隒がしい氎音をさせおいる方ぞ声を掛けた。

「なあ文次郎、これちゃんず萜ちおるか」
「―――ぁあ」

 䞀間ほど離れたずころにある塊がもそりず動き、やや間を眮いお、気だるげな声が返された。暗くお姿かたちたでよく芋えおいなかったが、やはり䞀緒に池ぞ飛び蟌んだのは文次郎だったらしい。
 うっすらず芋える圱から察するに、文次郎は埋儀に留䞉郎の方を向いおくれたようだった。それでもあたりの暗さが邪魔をしお、それ以䞊のこずがわからない。「だからこれだよ」ず留䞉郎が続けるず、「バカタレ、暗くお芋えんわ」ずいう蚀葉ずずもに氎を掻く音が䜕床か続いお、ようやく文次郎の顔が芋えた。留䞉郎ず同じように頭巟を取り、髪は乱れ、氎が滎り萜ちおいる、䜕ずもな有様である。

「―――はは 文次郎、氎に濡れおちったぁ男前になったんじゃねえか」
「ほざけ 誰のせいでこうなったず思っおる。これだからお前ら甚具委員䌚はヘタレなんだ。無関係の俺を巻き蟌むな」
「はあ さっきのはお前が自分から突っ蟌んできたんだろうが どちらかず蚀えば俺は巻き蟌たれた偎だ」
「お前がきちんず埌茩ぞ錻氎の管理指導をしないからこうなったず蚀っずるんだ」
「錻氎の指導っお䜕だよ」
「知るか」
「はあ 䜕蚀っ  あヌもう、ずにかく芋おくれよ。暗くお氎面じゃ芋えなくおな」

 六幎生たる者、ある皋床倜目が利くずはいえ月明りだけでは限床がある。自分から頌んだ手前、幟分か芋やすいようにず顔を近づけた留䞉郎を前に、文次郎はフンず錻を鳎らした。どうやら芋おくれるようだ。たったく埋儀な奎である。
 前髪に觊れる文次郎のその手぀きはぎこちない。初めは摘たんだ毛先をいじりながら眺めおいたが、それからぺたぺたず、刀断できるのかもわからない冷えた指先の感觊を頌りに、文次郎の䞡の手が留䞉郎の頭の圢をなぞっおいく。
 たるで撫でられおいるようだ、ず思った。やけに長く確認されおいる気がする。かさ぀いた指がずきおり耳を掠めるのがこそばゆく、思わず身じろぎするず、嗜めるように肩を掎たれたので留䞉郎は努めお耐えるこずを遞んだ。六幎生のなかでも矀を抜いお短い己の髪で䜕をそんなに芋るものがあるのかはわからないが、普段こんなにも静かにゆっくりず文次郎の顔を芋る機䌚もないので埅぀間眺めるこずにする。盞倉わらずひどい隈だ。そういえばここ数日委員䌚で忙しくしおいたんだっけか。垳簿䞊の数字を目で远うずきも、きっずこんな颚に眉間にしわを寄せお確かめおいるのだろう。文次郎の真剣そうな顔が面癜くお、迂闊にも肩が震えおしたったこずは本人にも気づかれおいるに違いない。

「―――そうだな、倧䞈倫なんじゃないか 现かいずころたではわからんから、あずは颚呂堎でどうにかするんだな」
「颚呂だあ ここたで来たらもう氎で  」

 確認を終えた文次郎の身䜓がわずかに離れお、倜の空気がふたりの間を流れた。粟立぀肌に、目の前の男が提案した意味を知る。気付かないうちにこんなにも䜓が冷えおいたらしい。

「銬鹿者。だからこそだろう、湯は济びずけ。たしかに銬鹿は颚邪を匕かないず蚀うが、䞇が䞀ずいうこずもある。それに今は保健委員が党員䜿い物にならんのだ。これ以䞊患者を増やすな」
「おめヌ 誰が銬鹿だっお」
「颚邪を匕かないよう気を぀けろず蚀っずるんだ」
「んなヘマするかよ ぀かお前だっお同じだろ。そんなびっしょり濡れ、お、  っお、―――おい。」
 䞍意に冷えた銖筋に文次郎の手が觊れ、びくりず肩が跳ねた。襟足を埌ろぞ払い、露わになった肌のうえをその手がゆっくりず滑っおいく。
「っ䜕だよ、」
「そうだ。俺もお前も身䜓が冷えおいる」
「それは  そうだが」
「早急に枩たる必芁があるな」
「だから䜕だっお  おい文次、文次郎。おい  っ、」

 留䞉郎の呌びかけにも応えず、文次郎は無蚀で胞元あたりを凝芖しおいるようだった。その居心地の悪さから逃れようにも肩をがっちりず抌さえ蟌たれおいお、埌ずさるこずも蚱されない。かさ぀いた手のひらは奜き勝手に、だが明確な意図をもっお留䞉郎の肌を撫でおいく。
 䜓が震えたのは冷えたせいだ。そうだ、早く湯に浞からなければ。改めお䞻匵を䌝えるも、文次郎は応えなかった。朱く染たった耳に觊れ、そのたた顎のラむンを䌝い降り、文次郎の冷えた指先が衿の隙間ぞず至ったずき、留䞉郎はその悪戯な手を反射的に掎んでいた。目の前の男が、勝ち誇ったようにふっず笑った気がした。

「お前ほんず    わかりにくいんだよ、い぀も  」
「はっ。銬鹿でも流石に気付くんだな」
「ッ気づかせるような觊り方しやがったくせに䜕蚀っおやがる」
「ああそうだ。気付かせたかったからな」

 くそ。文次郎の明け透けな物蚀いに殎りたくなるのを、ぐっず堪える。冷たいはずの手が熱い。ずいうか䜓䞭が熱い。掎んでいる文次郎の腕も熱くお、先ほどたで氎をかぶり続けお奪われおいた䜓枩が急速に戻っおいく。
「それで 颚呂ずお前の郚屋ずどっちがいい」
 そう蚀われた途端、顔にもぐわりず熱が集たった。『今は保健委員が党員䜿い物にならんのだ』―――ず、この男はそう蚀っおいなかっただろうか。
 はじめからどこたで考えお動いおいたのかず、たったく文次郎のくせに、融通の利かない鍛錬銬鹿のくせに、䌌合わないこずしやがっお腹が立っおしょうがない。
 悩んだ末にちいさく「  颚呂」ず返したのは文次郎を殎るためだ。䜓を枩め、油断したずころでお前を殎る―――そんな留䞉郎の䞻匵は、塞がれた口のなかで音にならず消えおいった。

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RKRN

✩RKRN
 
✩Monjiro×Tomesaburo
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Comic rkgk
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 掛け軞裏のもんけた 『遅れおきた委員長の段』のこれは䞀䜓䜕しおたの
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 もんけた 基本的にはお互い魂に惚れおる
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 もんけた事故チュヌ 犬猿は普段から距離感バグっおる

NOVEL
誘発されお戊堎 / 16期12話で錻氎たみれになったふたりがそのあず池でびしょ濡れになる話
けものの飢逓 / ほんずうは噛みたいのに我慢しおいる文ず噛みたいのなら噛めばいいのにずおもっおる留の話 ※事埌

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DCMK

 
  
癜快Webオンリヌ展瀺挫画

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BOOSTお瀌の挫画でした

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BOOSTお瀌挫画癜快

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芖線を捉える癜快


秋の色のなかにいる癜銬探ずいうものに、興味を抱いた、ただそれだけではあった。

噎氎のたわりを囲むようにぐるりず敷かれた石畳のうえを歩いおいるず、サクリ、ず也いた萜ち葉を螏んだ音がしお、黒矜は軜く足元に芖線を萜ずした。秋だ。赀だずか、黄色だずか、普段よりすこし景色が鮮やかになるこの季節は、嫌いではない。駅前のこの噎氎広堎も䟋倖ではなく、蟺りの朚々はそれぞれに玅葉が始たっおいた。それくらいには秋だった。
埅ち合わせはどこどこに、䜕時で。そう切り出したのは珍しくも自分のほうだった。癜銬はすこしだけ目を䞞くしおから、ああ、構わないよ。ず柔らかな声で答えた。こうしお今日の玄束は結ばれた蚳だけれど。
どこか行きたい所でもあるのかい。
んヌたあ、ナむショ。圓日のお楜しみっおこずで。
  僕が恥をかいたり、心臓が萜ちそうになるようなサプラむズで無ければ、倧歓迎だよ。
その時の癜銬の声色を脳内で再生しお、いやだなあ、喜ばせる぀もりはなかったんだけど、ず黒矜はひずりごちた。
この考えに至ったのはそのすぐ埌だ。蚀い出す前に思い圓らなかったのは、自分の萜ち床である。おや぀を前にめいっぱい手を䌞ばしお、傍らのお茶をこがしおしたうようなミスを、癜銬盞手にするなんお。
  いわゆる、デヌトだずか、そういうものをしよう、ず蚀った぀もりはなかったのだ。今曎な話ではあるけれど。今曎、本圓は『埅っおいる癜銬を芳察したかっただけ』ず蚀ったら、癜銬はどう思うだろうか。
そうたで考えお、自分の口元がゆるんでいるこずに、黒矜は気付いた。どうやら楜しい、ず思っおいるらしい。
だっお、おもしろそうじゃん。
自分がむタズラ奜きである自芚はあったけれど。せっかくの䌑日を返䞊しおたで、しかも癜銬を盞手に、䜕を自分は。
軜くふるふるず頭を振っおから、黒矜は離れた䜍眮にある噎氎の、背の高い氎しぶきを眺めた――自分がいるのは入口近くの怍え蟌みの前で、銀色のパむプで組たれた柵に座っおいる。公園の䞭心にある噎氎ずの間にある怍朚は䜍眮が少し入り組んでいお、しかもそれなりの人が埅ち合わせに䜿う駅前の公園ずくれば、ここは颚景に溶け蟌むには申し分のない堎所だった。
癜銬がこちらの入口から入っおきたら、たあその時はその時である。
たた改めお機䌚を狙っおやろう、ず思い぀぀、黒矜は倱敗する気はしおいなかった。
その皋床には、癜銬の行動パタヌンは知っおいた。知っおいるこずにすこし、躊躇いを芚えるくらいには。
い぀も圌が、埅ち合わせの十五分前には来おいるこず。黒矜の遅刻に盎前たで文句を蚀おうずしおいたくせに、目が合った瞬間、眉間に刻たれたわずかな皺が和らげられるこず。家の人に送られおくるずきたあほがこれだけどは、埅ち合わせ堎所の手前で車から降りお歩いおくるこず。そしお、他にもいろいろ。
そこで思考が劚げられたのは、芋぀めおいた先、たばらでもそれなりの人混みの合間を瞫っお、癜銬の姿をずらえたからだ。癜銬だ。黒矜は単玔にそう思った。
時間は、埅ち合わせ時刻の十五分前。なんお埋儀なや぀。ワンパタヌンなや぀。誰かに぀けられおいたら、䞀発じゃん。頭の䞭でそんな嫌味がいく぀か浮かんでは消える。
「んじゃ、た。本来の目的ずいきたすか」



朚枯らしが服の隙間を吹きぬけおいくには、ただすこし季節が早すぎるんじゃなかろうか。黒矜はそんなずころに悪態を぀いお、しょうもねえな、ず力を抜くために深く息を吐いた。
だっお秋だ、文句は蚀えたい。同じずころにもう䜕分もじっずしおいるせいか足先は冷えおくるし、パむプに座っおいるおかげで、尻も少々痛くもあり。臀郚にうっすらずした痛みを感じ始めおきた頃から、だんだんずこの状況が銬鹿らしくなっおきたこずもあっお、黒矜は思わず笑った。
仕方がないだろう。自分を笑いたくもなる。わざわざ倉な蚈画を緎っお、数十分ほど芳察しおみた圌の様子なんお、『正盎知らないでいたほうがマシだった』ずいう刀断を䞋すしかない。そんなものだった。
知らないでいたらただ、良かっただろうに。このたた䌚ったずしお、自分はどんな顔を癜銬の前に晒しおしたうか、わからない、そんなくらいには。
「――いえ、すみたせん。埅ち合わせおいる盞手がいたすので、」
圓の本人ずきたら、今は二人組の女性に囲たれおいる。先ほどは別の女性に。その前は、宗教団䜓の勧誘、その前は颚船配りのおにヌさんだったか。で、その前は――。
  よくもたあ、次から次ぞず。ず思ったのは黒矜であるが、癜銬の容姿を考えれば仕方のないこずかもしれない、ずすぐに前蚀を撀回した。あの長身で、ルックスがよくお、それでいおもう䞉十分近くも埅っおいるのだから、良いカモにされおも仕方がない。
ねえねえあの人、芞胜人かなあ かっこいいねヌ などず聞こえおくれば、玠盎に認めるしかなく。
秋のなかに溶け蟌んだ癜銬探のたわりには、たしかに独特の空気があっお、圌は人目を匕いおいる。もう随分ず。枩かそうなマフラヌをしお、この寒空のなか、ずっず。
「――  癜銬ァ、」
おもしろくないな、ず思い始めたのは、䜕分も前だったけれど。あれを知っおいるのは俺で、あれが埅っおいるのは俺で、ずいう劙な優越も同時に感じおいお。
けれどもう、十分楜しんだ。これ以䞊はおもしろくねヌし、ず黒矜はゆっくり息を吞い蟌んでから、もう䞀床蚀った。
「おいこら、癜銬。」
「  ―― 黒矜くん、」
匟けるように俯いおいた顔を䞊げ、こちらを凝芖しおいる癜銬の顔を芋お、さきほどの優越感が、満足感に倉わるのがわかる。
黒矜の目線の先にいる癜銬が、溜息を぀いた。目を閉じお、目頭を抌さえる。たったくもう  、ずいう心の声が聞こえおくる気がした。そしおすみたせん、ず囲んでいた人たちの間を割り、䞀盎線にこちらぞ歩んでくる癜銬を芋たら、もうどうしようもなかった。
「黒矜くん  あのねえ君、着いたなら連絡しおくれたっお――」
「ちゃんず気づいたんだな」
「  」
「゚ラむ゚ラむ。」
觊れられる距離に立぀、玅茶色の髪をした男の顔を黒矜は芋䞊げる。
癜銬が、䜕かを蚀いたそうに、けれど蚀葉に詰たったたた頬をうっすらず赀らめるから、もっずどうしようもなくなる。
「  い぀から芋おいたんだい」
「最初から、ずいうか、もっず前から」
「䜕か䌁んでいそうだずは思っおいたけど、たさかこんな  」
「べ぀に、先に埅っおただけじゃん」
「  、  っ恥ずかしいだろう  。」
君はたったく、ず右手で目元を芆いながら呟く癜銬に、黒矜はこころのなかで、恥ずかしいのはこっちだっ぀の、ずぶ぀けた。
癜銬が、  埅っおいるずきの癜銬が、䞀床も時蚈を確認しおいなかったり。数分前に送信した、『わりい、今日も遅れるわヌ』なんおいうふざけたメヌルを、癜銬がサブディスプレむを䞀芋しただけで読もうずもしおいなかったり。
それにあの状況で、黒矜の呌びかけに応じたこずだっお。
そうしおそれらから浮かんでくる事実を、たざたざず知らしめられるず、どうにも気恥ずかしかった。ポヌカヌフェむスの぀くり方なんお、あたたから抜け萜ちた。本来の目的は、それではないのに。
ただ、癜銬が自分をどう埅っおいるか、芋たかっただけなのに。
「  そんなに嬉しそうにしないでくれないか」
「  いやヌ、照れおる癜銬っおキチョヌだなあ、ず思っお。」
「    、」
はあ、ず癜銬のもらす、深い溜息すらも。
そうかオレ、いた嬉しそうな顔しおんのか。ならいっかな、ず黒矜は楜芳的に考えお、目の前にゆれるカシミダのマフラヌを䞡手で぀よく匕っ匵った。
いたずら奜きはどうにも、癜銬を困らせるのが奜きらしい。
「なあ、今日はどこ行こうか」


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